シデです。
いやー、暑いですね!
こう暑いとそれだけで体力を奪われるし、夜に寝付けないしで大変です。
仕事の疲れも抜けなくて、だんだんへばってきちゃいますよね。
スタミナをつけて夏を乗り切りましょう、とかいって、この時期になるとスタミナ料理が目につくようになりますが、その中でも代表的なのは
うなぎ!
ぼくはこれが大好きです。
毎日でも食べたいと思っているくらいですが、どうしても値段が高いので、たまに思い切って奮発して食べる程度です。
以前、百貨店のうなぎ屋に勇気を振り絞って入って、大枚3000円以上も払って食べたうな重は、はっきり言ってまずかったです。
あれで金取るかよって言うレベルで、腹が立って余計まずく感じたのかもしれません。
もう二度と行きません。
僕の理想のうなぎは、昔、母ちゃんが買ってきてくれたスーパーの中国産うなぎです。
一人一匹ではなく、一パック一匹を家族で分けるもんだから、一人分が4cm四方くらいのミニサイズになります。
うな重とはとても呼べません。
うな丼と呼ぶのも、うな丼に失礼な感じ。
明らかにご飯が優勢であり、
本日のメインディッシュ
The ご飯 うな丼への憧れ ~その香りに誘われて(いざなわれて)~
のようなシェフの自己満足ネームを付けて、うな丼とは区別するべき存在です。
これに、付属のタレと山椒をたくさんかけていただきます。
タレの染み込んだご飯ほど美味しいものはありません。
山椒の鮮やかな香りも相まって、どんどんご飯が進みます。
気づけばうなぎそっちのけで夢中でタレご飯を掻き込み、ご飯をお代わりしているのです。
もちろんまたタレをかけて掻き込みます。
満腹になった頃には添え物のように脂っぽいうなぎが残るだけで、ウップと言いながら残ったうなぎを渋々と食べるのです。
あの頃は良かったなあ。
この回想から察するに、普通のうなぎ屋のタレは僕には味が薄くて合わなかったということでしょう。
うなぎそのものよりも、タレの濃くて甘いわざとらしい味により、僕の中の理想のうなぎが形成されているのです。
あのうなぎをまた食べたいと思い、吉野家やスキ家でうな丼を頼んでタレご飯を堪能するも、強力な思い出補正により母ちゃんのうなぎに打ち勝てる代物には出会えていません。
うなぎの生体数が減ってきているそうですし、うなぎはほったらかして究極のタレ作りに励んだ方が満足感が高い気がします。
山椒はこれで決まりです。
さて、アホなことをダラダラ書いているうちに、なんだか騒がしくなってきたようで。
それは、夏真っ盛りのある暑い日のことでございます。
ドタバタドタバタ
ガラガラーッ!!!
先生ー、シら賀デん内センセーイ!
略してシデセンセーイ!
大変だよー、大変なんだよー
とにかくちょっと聞いておくれよー
おやおやなんだい、騒々しいねぇ
誰かと思ったら両替屋のせるり庵(セルリアン)の旦那じゃないか
え?
一体どうしたんだい、そんなに慌てて
まあいいから、いいから
ほら、まずはそこに座んなさいよ
水でも一杯飲んで落ち着きなさいな
いや、いや、こりゃかたじけねえ
ありがたくもらいやすよ
ん、ング、うぐ、ウグ プハーッ!
いやー、やっぱり運動した後の水ってのは、一口目の びいる の次くらいにうめえや
このために生きてるって感じだねえ
最高だよ本当に 生き返った心地だ
ありがとよ!
あばよ!
ガラガラーッ!
ドタバタ
ありゃりゃ、いっちゃったよ
一体何のようだったんだろうね
まあ、急用だったみたいだからきっとまた来るだろうね
ドタバタ
ガラガラー
いけね、いけね
相談があってきたのにね
ただ水飲んで帰るなんて、何しに来たのか分からないよ
いやー、お恥ずかしい
シデ先生も人が悪い
いきなり水なんか渡すもんだから、勢いで飲み干しちゃったよ
これが減量中のボクサーだったら、もう試合にならなくてノンタイトル戦で観客もドン引き、試合後は
引き回しの後に
釜茹で、
打ち首、
さらし首
ってもんだ
ましてやさっきいただいた水が びいる だったらいい気持ちになって戻ってこれないところだったよ
おや、やっぱり戻ってきたよ
今度は びいる でも飲むかね
いえいえ、結構
まだ真っ昼間じゃございやせんか
こんな時間から飲んでるのはよっぽどの金持ちか、ただのくずですよ
もう少し涼しくなったらお相手させてもらいたいですけどね
びいる飲むしか芸がない、これがホントの びいるくず ってね
Hahahaha !
さて、バカ話はさておき、何の用かね
急いでいたようだから、よっぽど大事な話だろうね
そうでした、そうでした
大事も大事、超重要な話があるんですよ
ご存知かと思いますが、あっし、両替屋やってるじゃないすか
この前の夏の特別給金、つまりは ぼうなす の時期は、あっしらにとっては稼ぎ時でして
え?いえいえ、あっしには別にぼうなすなんてありませんよ
日々お客様が見せてくれる笑顔が毎日のぼうなすみたいなもんで
とにかく金払ってくれれば笑顔とかどうでもいいです
え?どうやってぼうなすもらってる奴を見分けるって?
そりゃ顔見たら一発ですよ
もう顔がこーんなにぐにゃぐにゃになるくらいほくそ笑んじゃって、分かりやすいったらありゃしない
ぼうなすで懐が暖かくなった民が考えることなんて簡単なもんでさ
ちょいとばかし贅沢しようとか自分へのご褒美とか言って、いつもよりいい食事や酒、物見遊山を楽しんだり、やれ古くなった米びつを買い替えるだの、富くじだなんだで散財して、束の間の欲望を満たすくらいのもんで
大抵の者はそれで終いなんですが、その後に余った銭を老後の蓄えに回そうなんて考える少し賢いのが一定数いるんですよ
そこにつけこんで、あっしらが最近売り出した投資信託を売りつけてやるんです
え?そんなの聞いたことないから、怪しいって?
いやいや、この界隈じゃ常識ですよ
最初はみんないぶかしがってみせるんだけど、ちょいとばかし老後不安を煽ってやれば、奴(やっこ)さんすぐに飛びついてくるんで、もう入れ食い状態
どんなくだらねぇ投資信託だって、こっちがそれらしい理由を作ってやれば分かった気になってイチコロですよ
これを毎回のぼうなすの度に繰り返せば、結構いい銭になるんでして
なるほどねえ、いい商売じゃないか
へへへ、
都合いいことに、一度買ってもらった客にはまた次の話が通りやすくて
この前なんかは
新しいイキのいい投資信託が入荷したよ、
お前さんの耳にだけは一早く入れたくてね、
今度のは井戸水の水質評価に連動する斬新な商品だ、
この町の水はうまいからねえ、
そのうちお偉いさんのお墨付きをもらって、何かの品評会で金賞でも取れば評価は急上昇ってもんよ、
これは間違いねーよ、
え?前に買った漬物の臭いの強さに連動するのはどうすればいいかって?
お前さん、まだそんなしなびたもん持ってたのかい?
イケてないねぇ
そんなもん、さっさと売っちまいな
それでこの新しいの買いなよ
とか言ってでっちあげたら勝手に信用して、あるだけ売ってくれ、なんつって飛びついてくるんで、こっちは楽でしょうがねえんすよ
両替だけじゃ糞の儲けにもならないんでね、これからは積極的にこっちでいきますよ
え?そんなにいいならお前も自分で投資信託買ってるのかって?
もちろんですよ
世界の市場に分散投資っつってね、
常に手数料とあせっとあろけぃしょんを気にして買い付けてましてね
ねっと証券使えば手軽に始められるようになって、本当にいい時代ですよ
え?井戸水じゃなくてそれを客に勧めないのかって?
馬鹿言っちゃあいけねぇ
あっしらも商売だからね、
いつでも とれんど に敏感でいないと
今は井戸水がキテるんでさ
手数料も自分で好きなように決められるし
へへへ
なんだい、ただの自慢話かい
そのくだらない話はいつ終わるのかね
私の貴重な時間を奪わないでおくれよ
おっと、気分を悪くされたんじゃたまらねえや
実はね、問題は ぼうなす 以外の時期でしてね、
普段の給金だけですと、民もなんとか生活するので精一杯みたいなんですよ
金の切れ目が縁の切れ目、ない袖は振れないってなもんで、ちっともこっちに顔見せやがらねえ
ぼうなす の時ばっかり羽振りが良いだけじゃこっちも物足りないんですよ、
なんとか定期的に民から銭を搾り取れる妙案がないものか、
このような都合のいいことを相談に来たってわけですよ!
ふーむ、なるほど 商売繁盛結構なことだが、あまり無茶しなさんなよ
いやね、何も考えがないからもったいぶっている訳じゃない
何事も程々が大事だと言っておる
御上に目をつけられない程度にやっておくれよ
最近は監視の目が厳しくなってるそうだから
さて、お前さんの希望に沿う案だが、実はすでにわしの頭には浮かんでおる
だがこれを言語化するには、やはりこう、何かきっかけが必要でな
最初の勢いがなければ、何事もうまく進み始めることは難しいものだ
ゲフンゲフン
まあ、つまり、分かるな?
あ、、、、
あー、はいはい、そういうことですか
ええ、分かっております、分かっております
もちろんでございやすよ
その心意気というか、誠意というか、お礼というか、手付金というか、そういうことでしょ
大丈夫です、大丈夫です、もちろん考えてますよ
そうですね
じゃあ、1両くらいでいかがでしょう
(注: 作者は1両の価値がよく分かっていません)
え?少し寂しい?
じゃあ2両とか?
え?偶数は割り切れるから嫌い?
じゃあ3両では?
え?素数は孤独を感じるし何故か落ち着くから嫌だ?
もうこれが限界ですよ、
9両、これで終いだ
お願いしますよ
え? 一時払いじゃなく、あっしの売り出してる投資信託の売上の1分5厘(1.5%)くらいにしろって?
成果が出るかどうか不安だろうから、歩合制の方があっしに都合がいいだろうって?
即金9両よりもそっちがいいんですかい
すごい自信ですね、シデ先生
いやいや
先生の腕を疑ってる訳じゃないですよ
分かりました
そうおっしゃるならその条件でお願いします
ターンッと!
ひとつっ!
とっておきのいい案を授けてくださいよ
【ニヤリ、かかった! チョッろいわー!!】
よし、間違いなくその条件で頼むぞ
では早速わしの案をお伝えしよう
何ももったいぶったからと言って難しい話じゃない
まず民衆というものは、何かお題目とか流行りものを見つけるとそれに疑いもなく乗っかるものだ
そこに目をつけて、注目を集めるような きゃっちこぴぃ を作るわけだよ
これをのぼりに掲げて太鼓と笛の一つでも鳴らせば、祭り好きの民のことだ、
何の いべんと かと言って簡単に注目を集められるだろう
へえ、そいつぁいいや
それで、肝心の きゃっちこぴぃ だっけ?
それは何なんです?
まあ慌てるな
こういうものは語呂合わせとか語感、響きが大事でな
例えば投資だから
とうし
とう し
10 4
14
このあたりを絡めて、
とうしの日
毎月14日は投資の日
10月4日は大投資の日
名付けて と用のうしの日 とかどうだろう
へ?
と用の、、、うしの日、
ですか
何かどこかで聞いたことある気が、、、
そ、そう?
完全おりじなるだけど?
なんだよ、文句あるならこの話はなしだ
帰れよ、この時間泥棒!
わ、わかりましたよ
その、と用のうしの日ってやつ、素晴らしい!
何度も口に出せば馴染んできそうだし、何より覚えやすいのがいいじゃないですか
早速使わせていただきやす
でもちょっと著作権の心配も、、、
何を言っておる
っていうかわしの渾身のおりじなる きゃっちこぴぃ をパクリとか言うのひどくない?
ちょべりば!
mk5!
へ?なんとおっしゃったんで?
悪い意味じゃなくて、万が一ってこともあるんでですね
その何か対策があれば、、、
むぅ、そこまで心配なら、、、
いざとなったらこう言っておやりなさい
ゴニョゴニョゴニョゴニョ
なるほど!
それなら安心だ
何から何までありがとうございます!
数日後、せるり庵の店先には多くののぼりが掲げられました。
思惑どおりに群がる民衆に対して、せるり庵の店主はたたみかけます。
そこ行くご婦人、殿方
さあ、よってらっしゃい、見てらっしゃい
と用のうしの日、と用のうしの日だよ
銭があればあるだけ使っちまう
自分で貯金なんかできない
ひと財産築くなんて絶対無理
そんな銭の管理ができないダメ人間にうってつけの画期的な資産管理方法をご紹介するよ
毎月の給金からあらかじめ一定額を差っ引くって方法だ
あとは残った銭で何とか暮らせばいい
差っ引いた分が毎月貯まって、ご隠居になったときには結構な額になってるって算段さ
それだけかって?
馬鹿言っちゃいけねぇ
それを運用するんだよ
毎月差っ引いた一定額で、うちの投資信託を買い付けるのさ
ただ貯めておくより、運用利益が乗っかっていつの間にか銭が膨れ上がる
こんな簡単な話はないよ
え?安い時に買って高い時に売るからこそ儲かる?
それが難しいから投資に手が出せない?
つべこべ言わず買い時を教えろって?
明日の天気と投資信託の値動きは神様のみが知ってるのさ
それを人間が占おうなんておこがましいと思わんかね
買い時なんて誰にもわからねぇ
考えても分からねぇもんは仕方ないのさ
でも、俺は思うんだ
うちの投資信託はいつか爆上がりするってさ
いつ上がるかなんて知ったこっちゃねぇよ
とにかくいつか上がる
俺はそう信じてる
だから買うなら今だよ
え?今は金がない?
じゃあ次の月の14日はどう?
14日は14(とうし)の日ってことでさ
ほら、こののぼりに書いてあるだろ
そう!だから、と用のうしの日 なの!
そこの旦那、賢いね!
給金が出たら、あらかじめその分使わないでとっておくんだぜ
俺が必ず集金に行って、しっかりとその銭で投資信託を買い付けるからさ
任しといてよ
え?何の投資信託がおすすめかって?
本当はこれは大声で言っちゃまずいが、最近は日照り続きで火消し用の水が不足しているんだってね
だから、今は井戸水かな
これは相当固いよ
さあさあ、早く始めた者から貧乏生活にさよならだ
やらなきゃ損、損!
よってらっしゃい!!
わーーーーー!!!
せるり庵の店主のはったりにより、砂糖に群がるアリのように誘われた民衆は、次々と投資信託の毎月購入契約を結んでいきます。
おっと言い忘れたけれど、こっちも商売なんでね
投資信託の評価額の1割相当は、集金手数料、運用手数料、広告費(シデ先生用)のなんやかんやで頂戴するからね
なーに、ほっときゃ2倍、3倍になるんだ
年間で1割くらいなんてことない
そんなの気にしてちゃ気持ちよく投資なんてできないよ
とにかく俺に任しときなって
わーーーーー!!!
ちょいと失礼するよ
こののぼりの と用のうしの日 ってのは、盗作じゃないのかね
なにぃ?
何を訳の分からねぇこと言ってやがんでぇ
これはあの有名なこぴぃらいたぁ シら賀デん内先生の力作だぜ
それを盗作だとぉ?
てめぇ、どこのすっとこどっこいだ!
ワシは平賀源内と申すものだが、ワシの作ったきゃっちこぴぃ 土用の丑の日 にあまりにそっくりだと思ってね
え?
平賀源内さん?
あのうなぎの販促用の人?
ほ、本物?
ば、ば、馬鹿言っちゃあいけねぇよ
俺っちのはシデ先生の完全おりじなるだい
たまたま平賀さんのと響きが似てるだけだろうよ
盗作なんてとんでもねえ
ほっといてくれ
邪魔するなら帰ってくれよ
ほう、ここまで言って認めないか
ではどこが異なっているのか説明してもらおう
なんだとぉ?
俺っちのは ど用のうしの日 とは大違いだ!
お前さんのは と に点々がついてるな!
これはうなぎの目のつもりだろう?
あいにくうちのは、目がないんだ
俺と同じで、金には目がないんでね
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